多汗症多汗症
背景背景

多汗症

発汗には、体温調節機能、湿度保持機能、細菌・ウイルスなどの侵入を防御する自然免疫機能があります。
ヒトの汗腺には、ほぼ全身に分布するエクリン汗腺と、特定部位に存在するアポクリン汗腺の2種類があります。

エクリン汗腺

ほぼ全身の皮膚に存在しており、特に手掌・足底・腋窩に多く存在しています。
主に体温調節のために、水分の多い汗を分泌します。1日におよそ700~900mlの汗を産生します。
多汗症の症状である多量の汗は、主にエクリン汗腺から出ています。

アポクリン汗腺

腋窩、外耳道、鼻翼、鼻前庭、乳輪、臍周囲、外陰部に存在しています。汗は粘稠性で無臭ですが、皮膚の表面に出ると常在細菌によって臭いを帯びるようになります。

多汗症

発汗の種類

温熱性発汗

炎天下や運動などの温熱刺激により体温が上昇したときに、体温を下げて体温を一定に保つための発汗です。

精神性発汗

緊張・興奮・不安・ストレス・恐怖・驚きなどの精神的刺激により起こる発汗です。

味覚性発汗

辛みの成分であるカプサイシンなどにより、顔面に発汗が生じます。

多汗症の分類

全身性多汗症

  • 原発性全身性多汗症:特に原因がない
  • 続発性全身性多汗症:結核などの感染症、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫などの内分泌異常、神経疾患、薬剤性

局所性多汗症

  • 原発性局所性多汗症:特に原因がない
  • 続発性局所性多汗症:味覚性発汗(Frey症候群など)、エクリン母斑、不安障害、片側性局所性多汗(神経障害、腫瘍など)

原発性局所多汗症

汗の量が多くなる原因となる病気や障害がないのにもかかわらず、頭・顔・手掌・足底・腋窩に、温熱や精神的負荷の有無とは無関係に、日常生活に支障をきたす程の過剰な発汗を認める疾患を原発性局所性多汗症といいます。
原発性局所多汗症のある人のうち、医療機関の受診率は6.21%(男性が5.0%、女性が9.0%)といわれています。
原発性掌蹠多汗症、原発性腋窩多汗症、原発性頭部顔面多汗症があります。

原発性掌蹠多汗症

幼少児期ないし思春期ころに発症し、手掌と足底に精神的緊張により多量の発汗を認める状態です。症状の重い例では時にしたたり落ちる程の多汗がみられ、手や足は絶えず湿って指先が冷たく、紫色調を帯びていることもあります。
日常生活では書類に汗じみができたり、握手をすると相手に不快感を与えたりすること、パソコン、スマートフォンなど電気機器の破損などの社会的苦痛を感じます。
発汗量は昼間(10時~18時)に多く、また情動的刺激により覚醒時は正常人に比べ著しい発汗の増加がみられます。しかしながら大脳皮質の活動が低下する睡眠中の発汗は停止しています。
季節により発汗量の変動がみられます。寒い時期で体感温度が低い時は発汗量が減り、蒸し暑い時期で体感温度が高くなると発汗量が増える傾向にあります。

手のひら・足の裏の汗

原発性腋窩多汗症(わき汗)

腋窩(わき)から両側性に過剰な発汗が生じる状態です。20人に1人の腋窩多汗症患者がいるといわれています。掌蹠多汗症を伴っていることもあります。
両わきに下着やシャツにしみができるほど多汗がみられ、時に1日で何回も取り替える必要があるほどの症状もみられます。
制服を着用するような職業や対人関係に関わる職業など、社会活動や精神活動に悪影響を及ぼすこともあります。
2020年11月に、日本初の「原発性腋窩多汗症(わき汗)」に対する外用薬"エクロックゲル"が保険診療で処方できるようになりました。

脇汗

原発性頭部顔面多汗症

耳介上部から側頭部、後頭部および前額部からの大量の発汗をきたす原発性局所多汗症です。
男性に多くみられ、長期間(2年から20年以上)持続し、数年にわたって毎年増悪することがあります。
熱い食べ物や飲み物の摂取後あるいは物理的ないし情動的ストレスによって、頭髪は洗髪後、前額部は洗顔後のごとく汗がしたたり落ちることがあります。このような多汗は通常数分間で収まりますが、数時間から一日中続くこともあります。

顔の汗

原発性局所性多汗症の診断

局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上認められ、以下の6症状うち 2項目以上あてはまる場合に診断されます。

  1. 最初に症状がでるのが 25 歳以下であること
  2. 対称性に発汗がみられること
  3. 睡眠中は発汗が止まっていること
  4. 1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること
  5. 家族歴がみられること
  6. それらによって日常生活に支障をきたすこと

原発性局所多汗症の
重症度分類
(HDSS:Hyperhidrosis disease severity scale)

  • ①発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
  • ②発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
  • ③発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
  • ④発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある

③と④が重症の指標です。

当院での治療

塩化アルミニウム

日本皮膚科学会原発性局所性多汗症ガイドラインでは、すべての原発性局所性多汗症に塩化アルミニウムが第一選択として推奨されています。
保険適用外のぬり薬です。およそ1,000~2,000円程度です。
1日1回就寝前に塗布します。効果が出るまで毎日続けます。
ときに刺激性の接触皮膚炎(かぶれ)を生じることがありますが、休止や保湿薬、ステロイド外用により使用を継続することが可能です

密封療法(ODT:occlusive dressing technique療法)

掌蹠多汗症で重症な場合は、塩化アルミニウムの密封療法を行ないます。
就寝前に外用液を手掌または足底の発汗部位に大量に塗布(薄手のガーゼや綿手袋に含ませてもよい)し、さらに上からゴム手袋またはサランラップなどで覆い翌朝まで行います。翌朝水洗いして外用液は取り去ります。
効果がでるまで連日投与し、効果がでた後は発汗する個人の間隔で行います。傷がある部位や、掌蹠以外は刺激皮膚炎を避けるため、あらかじめ白色ワセリンなど用いて保護を行います。

エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)

エクロックゲル

2020年11月発売のぬり薬です。
保険診療で処方ができるようになった日本初の「原発性腋窩多汗症(わき汗)」に対する外用薬です。1日1回両脇に塗ります。

作用

抗コリン作用(交感神経から出るアセチルコリンが、エクリン汗腺にあるムスカリン受容体M3に結合するのをブロックする)により、エクリン汗腺からの過剰な汗の分泌を抑制します。

使用方法

エクロックゲル
  1. 使用の前にわきの水気をタオルなどでよく拭き取ってください
  2. 開封後、最初に使うときは、薬液が出てくるまで3~4回ポンプを空押しします。
  3. 本剤は、ポンプ付きのボトル、アプリケーター、キャップが一体になっています。
  4. 水平にしたアプリケーターの上面にポンプを1押ししてエクロックゲルをのせます。
  5. 薬液をのせたアプリケーターを使い、薬液をわき全体に塗り広げます。毛一方のわきにも同様に薬液を塗ります。
  6. 薬液を塗った後、わきが乾くまでは寝具や衣服が触れないように注意してください。
  7. 使用後のアプリケーターに残った薬液は、ティッシュペーパーなどでていねいに拭き取るか、水で洗い流してください。

ご注意

  • 使用する際は、必ずアプリケーターを使用し、手を使って塗らないでください。
  • 薬液が手についた場合は、絶対に顔や目をさわらず、すぐに水で洗い流してください。
  • 可燃性のため、火気のないところでご使用ください。
  • こどもの手の届かないところで室温で保管してください。
  • 緑内障や前立腺肥大の方、わきに傷や湿疹・皮膚炎がある方、妊娠中や授乳中の方は、あらかじめ医師・薬剤師にお知らせください。
  • 皮膚炎や紅斑、かゆみ、湿疹、あせも、口の渇き、光をまぶしく感じるなどの症状があらわれたら、使用をやめて、すぐに医師の診察を受けて下さい。

エクロックゲルQ&A

Q1:「"1日1回"とは、いつ塗布すればいいですか? 」

A1:「毎晩就寝前など、決まったタイミングでの塗布をお勧めします。入浴後など腋窩が濡れている場合は、水気をタオルなどでよくふき取ってから使用してください。」

Q2:「塗布後、乾かす必要がありますか?」

A2:「乾かしてから衣服を着用します。衣服等への薬剤の付着を防ぐために塗布後は乾かしてください。」

Q3:「塗布後、洗浄してしまった場合はどうすればよいですか?」

A3:「塗布後洗浄した場合の有効性についてのデータはありませんが、再度塗布せず、1日1回塗布を遵守してください。すぐに洗い流してしまう可能性を避けるためにも、エクロック®は入浴後にご使用いただくことをお勧めしています。」

Q4:「塗り忘れた場合はどうすればよいですか?」

A4:「塗り忘れた場合は、気付いた時点で塗布してください。2回分を1度に塗布しないでください。」

Q5:「使用量の目安を教えてください。」

A5:「1回の使用量は、右わきにポンプ1押し分、左わきにポンプ1押し分です。」

Q6:「ボトル1本でどの程度の期間使用できますか?」

A6:「1日1回、右わきにポンプ1押し分、左わきにポンプ1押し分使用した場合、ボトル1本(20g)が14日分に相当します。」

Q7:「他の原発性局所(手掌、足底、頭部・顔面)多汗症に対する適応はありますか?」

A7:「原発性腋窩多汗症以外の適応はありません。」

Q8:「続発性多汗症にも使用できますか?」

A8:「続発性多汗症に対する有効性及び安全性は検討されておらず、本薬の適応外です。」

Q9:「治療にはどのくらいの期間が必要ですか?」

A9:「6週間を効果判定の目安とし、対症療法薬であることから、改善が認められた後も塗布を継続してください。」

Q10:「妊婦への使用は可能ですか?」

A10:「妊婦を対象とした臨床試験は実施していないため、安全性は確立していません。妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用します。動物実験(ラット:皮下投与)において、胎盤通過性が報告されています。」

Q11:「授乳婦への投与は可能ですか? 」

A11:「授乳婦を対象とした臨床試験は実施していないため、安全性は確立していません。治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討します。動物実験(ラット:皮下投与)において、乳汁中に移行することが報告されています。」

Q12:「小児への投与は可能ですか? 」

A12:「12歳未満の小児等を対象とした国内臨床試験は実施していないため、安全性は確立していません。」

Q13:「使用できない人はいますか? 」

A13:「・閉塞隅角緑内障の患者さん 
抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがあります。
・前立腺肥大による排尿障害がある患者さん 
抗コリン作用により、尿閉を誘発することがあります。
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん」

ワキ汗の情報・サポートサイト ワキ汗治療ナビ
いっかく皮膚科クリニック
いっかく皮膚科クリニックは、姫路市広畑区にある皮膚科医院です。皮膚科の診療とともに、皮膚腫瘍の手術、シミ・ほくろ・イボ治療、医療レーザー脱毛などの美容皮膚科診療を行います。

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