発汗には、体温調節機能、湿度保持機能、細菌・ウイルスなどの侵入を防御する自然免疫機能があります。
ヒトの汗腺には、ほぼ全身に分布するエクリン汗腺と、特定部位に存在するアポクリン汗腺の2種類があります。
ほぼ全身の皮膚に存在しており、特に手掌・足底・腋窩に多く存在しています。
主に体温調節のために、水分の多い汗を分泌します。1日におよそ700~900mlの汗を産生します。
多汗症の症状である多量の汗は、主にエクリン汗腺から出ています。
腋窩、外耳道、鼻翼、鼻前庭、乳輪、臍周囲、外陰部に存在しています。汗は粘稠性で無臭ですが、皮膚の表面に出ると常在細菌によって臭いを帯びるようになります。
炎天下や運動などの温熱刺激により体温が上昇したときに、体温を下げて体温を一定に保つための発汗です。
緊張・興奮・不安・ストレス・恐怖・驚きなどの精神的刺激により起こる発汗です。
辛みの成分であるカプサイシンなどにより、顔面に発汗が生じます。
汗の量が多くなる原因となる病気や障害がないのにもかかわらず、頭・顔・手掌・足底・腋窩に、温熱や精神的負荷の有無とは無関係に、日常生活に支障をきたす程の過剰な発汗を認める疾患を原発性局所性多汗症といいます。
原発性局所多汗症のある人のうち、医療機関の受診率は6.21%(男性が5.0%、女性が9.0%)といわれています。
原発性掌蹠多汗症、原発性腋窩多汗症、原発性頭部顔面多汗症があります。
幼少児期ないし思春期ころに発症し、手掌と足底に精神的緊張により多量の発汗を認める状態です。症状の重い例では時にしたたり落ちる程の多汗がみられ、手や足は絶えず湿って指先が冷たく、紫色調を帯びていることもあります。
日常生活では書類に汗じみができたり、握手をすると相手に不快感を与えたりすること、パソコン、スマートフォンなど電気機器の破損などの社会的苦痛を感じます。
発汗量は昼間(10時~18時)に多く、また情動的刺激により覚醒時は正常人に比べ著しい発汗の増加がみられます。しかしながら大脳皮質の活動が低下する睡眠中の発汗は停止しています。
季節により発汗量の変動がみられます。寒い時期で体感温度が低い時は発汗量が減り、蒸し暑い時期で体感温度が高くなると発汗量が増える傾向にあります。
2023年6月より「原発性手掌多汗症(手汗)」に対して、アポハイドローションが処方できるようになりました。
耳介上部から側頭部、後頭部および前額部からの大量の発汗をきたす原発性局所多汗症です。
男性に多くみられ、長期間(2年から20年以上)持続し、数年にわたって毎年増悪することがあります。
熱い食べ物や飲み物の摂取後あるいは物理的ないし情動的ストレスによって、頭髪は洗髪後、前額部は洗顔後のごとく汗がしたたり落ちることがあります。このような多汗は通常数分間で収まりますが、数時間から一日中続くこともあります。
局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上認められ、以下の6症状うち 2項目以上あてはまる場合に診断されます。
③と④が重症の指標です。
2020年11月発売のぬり薬です。
保険診療で処方ができるようになった日本初の「原発性腋窩多汗症(わき汗)」に対する外用薬です。1日1回両わきにぬります。2023年6月1日には「ツイストボトル」が発売されました。
12歳以上が適用になります。
抗コリン作用(交感神経から出るアセチルコリンが、エクリン汗腺にあるムスカリン受容体M3に結合するのをブロックする)により、エクリン汗腺からの過剰な汗の分泌を抑制します。
2022年5月23日に、エクロックゲルに続き発売された「原発性腋窩多汗症(わき汗)」に対する外用薬(拭き取り式のワイプ製剤)です。
1日1回、1包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を両腋窩に塗布します。9歳以上の患者さんが適応です。
エクロックゲル同様に抗コリン作用があり、発汗に関与する神経伝達物質であるアセチルコリンのムスカリンM3受容体への結合を阻害し、汗の産生を抑えます。
2023年6月1日に発売された日本初の原発性手掌多汗症(手汗)に対するぬり薬です。
原発性手掌多汗症の患者さんは国内で493万人いると推計され、決して珍しくありません。多くは10代(平均13.8歳)に症状が現れ始めます。
手のひらから過剰な発汗があると、社会活動(握手など)やペーパーワーク、電子機器の操作などに大きな支障をきたします。
12歳以上が適用になります。
アポハイドローションは手のひらの皮膚から吸収されます。皮膚の下にある交感神経から出されるアセチルコリンは発汗を促す物質で、アポハイドローションはそのアセチルコリンが結合するムスカリンM3受容体をブロックすることで、過剰な発汗を抑えます。
1日1回、就寝前に両手掌全体に塗布します。
日本皮膚科学会原発性局所性多汗症ガイドラインでは、すべての原発性局所性多汗症に塩化アルミニウムが第一選択として推奨されています。
保険適用外のぬり薬です。およそ1,000~2,000円程度です。
1日1回就寝前に塗布します。効果が出るまで毎日続けます。
ときに刺激性の接触皮膚炎(かぶれ)を生じることがありますが、休止や保湿薬、ステロイド外用により使用を継続することが可能です
掌蹠多汗症で重症な場合は、塩化アルミニウムの密封療法を行ないます。
就寝前に外用液を手掌または足底の発汗部位に大量に塗布(薄手のガーゼや綿手袋に含ませてもよい)し、さらに上からゴム手袋またはサランラップなどで覆い翌朝まで行います。翌朝水洗いして外用液は取り去ります。
効果がでるまで連日投与し、効果がでた後は発汗する個人の間隔で行います。傷がある部位や、掌蹠以外は刺激皮膚炎を避けるため、あらかじめ白色ワセリンなど用いて保護を行います。
A1:「毎晩就寝前など、決まったタイミングでの塗布をお勧めします。入浴後などわきが濡れている場合は、水気をタオルなどでよくふき取ってから使用してください。」
A2:「乾かしてから衣服を着用します。衣服等への薬剤の付着を防ぐために塗布後は乾かしてください。」
A3:「塗布後洗浄した場合の有効性についてのデータはありませんが、再度塗布せず、1日1回塗布を遵守してください。すぐに洗い流してしまう可能性を避けるためにも、寝る前にご使用いただくことをお勧めしています。」
A4:「塗り忘れた場合は、気付いた時点で塗布してください。2回分を1度に塗布しないでください。」
A5:「1回の使用量は、アプリケーター付きボトルでは、右わきにポンプ1押し分、左わきにポンプ1押し分です。ツイストボトルでは、1回で片わき分の薬液が出ます。」
A6:「20gで14日分に相当します。アプリケーター付きボトルには、20g(14分)と40g(28日分)のボトルがあります。ツイストボトルは40g(28日分)のみになります。。」
A7:「エクロックゲル、ラピフォートワイプには、原発性腋窩多汗症以外の適応はありません。脇以外の部位へのご使用はお控えください。 」
A8:「続発性多汗症に対する有効性及び安全性は検討されておらず、本薬の適応外です。」
A9:「6~8週を効果判定の目安とし、対症療法薬であることから、改善が認められた後も症状が気になる間は塗布を継続してください。」
A10:「妊婦を対象とした臨床試験は実施していないため、安全性は確立していません。妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用します。動物実験(ラット:皮下投与)において、胎盤通過性が報告されています。」
A11:「授乳婦を対象とした臨床試験は実施していないため、安全性は確立していません。治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討します。動物実験(ラット:皮下投与)において、乳汁中に移行することが報告されています。」
A12:「エクロックゲルは12歳以上、ラピフォートワイプは9歳以上が適応となります。」
A13:「・閉塞隅角緑内障の患者さん
抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがあります。
・前立腺肥大による排尿障害がある患者さん
抗コリン作用により、尿閉を誘発することがあります。
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者さん」
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