乾癬(かんせん)乾癬(かんせん)
背景背景

乾癬(かんせん)

乾癬は、赤い発疹の上に、カサカサした白いふけや、かさぶたのようなものができる病気です。
発疹の数や形はさまざまで、摩擦などの刺激を受けやすいひじ、ひざ、おしり、頭などに多くできますが、からだのあらゆる場所に出ます。爪が変形してガタガタすることや、関節痛が出ることもあります。
近年、乾癬患者さんの数は徐々に増加しつつあり、国内に10万~20万人とも言われています。乾癬の原因ははっきりわかっていませんが、「体質的な素因」と、さまざまな「環境因子」が関連していると考えられています。乾癬はウイルスや細菌によるものではありませんので、人にうつす心配はありません。

乾癬

乾癬の病型

  • 尋常性乾癬:いちばんよく見られる通常のタイプです。
  • 膿疱性乾癬:膿(うみ)を伴うタイプです。
  • 関節症性乾癬(乾癬性関節炎):関節痛を伴うタイプです。
  • 乾癬性紅皮症:全身が真っ赤になるタイプです。
  • 滴状乾癬:小さな皮疹が多発するタイプです。

乾癬と関節炎
(乾癬性関節炎、関節症性乾癬)

乾癬は皮膚に症状が出現するだけではなく、首、腰、手足の指、アキレス腱部分などが痛い、動かしにくい、腫れぼったい、こわばる、などの関節症状が生じることもあります。「まさか自分の関節痛が乾癬に関係していたなんて」とおっしゃる患者さんもおられます。
日本ではおよそ5~6万人の乾癬性関節炎の患者さんがいます。そのリスク因子としては、爪症状がある、頭皮に皮疹がある、肥満がある、皮疹が広範囲であることです。
日本人では、皮膚症状が出現してから関節症状が出現する皮膚症状先行例が75%、同時発症が20%、関節症状先行例が5%といわれています。
皮膚症状は治療で改善しますが、関節症状は関節が変形して元通りに改善しない状態に進行しますので、早期診断が大切です。
ただし、乾癬の患者さんに生じる関節症状が必ずしも乾癬性関節炎とは限らず、変形性関節炎、痛風などの場合もありますし、乾癬性関節炎と変形性関節炎の両者を合併している場合もあります。
そのため、乾癬のある患者さんで関節症状が生じた場合は、早めにかかりつけ皮膚科にご相談ください。リウマチ医などに紹介し、超音波、レントゲン、MRIなどで精査の上、乾癬性関節炎と診断された場合は、関節破壊症状が生じる前に早期に治療を開始します。

当院での治療

乾癬は出たり引いたりを繰り返すため、症状には波があります。
症状をなるべく軽く抑えた状態(寛解)を維持することが治療の目標になります。
長く付き合っていかなければならないことが多いため、定期的に皮膚科専門医を受診し、良い状態を維持するためにしっかりと治療を継続することがとても大切です。

外用療法(ぬり薬)

毎日決められた薬を、決められた回数きっちりと塗ることが大切です。乾癬の皮膚症状に応じて、副作用を確認しながら、ぬり薬を使い分けます。

ステロイド外用薬

皮膚の炎症をおさえ(抗炎症作用)、免疫反応を調整する作用をもちます。強さは5段階あり、ぬる場所や皮膚の症状に合わせて選択します。

活性型ビタミンD3外用薬

表皮の角化細胞の増殖・分化に作用します。ステロイド薬よりも効果の発現は遅いですが、寛解期間(症状が治まっている期間)を長く維持することができます。

配合外用薬

ステロイドと活性型ビタミンD3の2種類が配合されたぬり薬で、相乗効果により速やかな効果が期待できます。

ブイタマークリーム
(タピナロフ)

2024年10月に発売された新規作用機序のぬり薬です。
ブイタマークリームは、芳香族炭化水素受容体(AhR)を活性化することにより、さまざまな遺伝子に働きかけて効果を発揮します。
この作用機序に基づき、Th17サイトカイン(IL-17A、IL-17F)といった炎症性サイトカインを低下させ、乾癬における皮膚の炎症を抑制し、Nrf2経路の抗酸化分子の発現を誘導して酸化ストレスを低下させ、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリンなどを増加させることで皮膚バリア機能を改善します。

乾癬では16歳以上が適応になり、1日1回使用します。1回の使用量の上限は定められていません。比較的多い副作用としては、毛包炎(16.9%)、接触皮膚炎(13.7%)があります。発売時点で3割負担で1本(15g)1,354円になります。

ブイタマークリーム

芳香族炭化水素受容体(AhR)とは

リガンド依存性に機能が調節される転写因子であり、食物や微生物、汚染物質、代謝産物といった様々な化合物によって活性化されます。
AhRは、①化学物質に対する防御、②微生物に対する防御、③エネルギー代謝、④細胞の発生と分化、⑤生殖、さらに⑥免疫系において免疫応答を調節する重要な役割を果たしています。

光線治療

ぬり薬では治りにくい部分や、広い範囲に皮膚症状がある場合に行う治療です。
当院では、部分的に照射するタイプと、全身に照射するタイプの2種類の機器を完備しています。光線治療は、内服薬や注射薬のように副作用を心配する必要がほとんどないため、多くの患者さんにとってまず試してみても良い優れた治療法です。
光線治療により、長期に寛解(病状が治まっている状態)を維持でき、ぬり薬の使用量や副作用を減らすことができます。

光線療法について詳しくはこちら
光線療法

内服薬(のみ薬)

抗ヒスタミン薬

かゆみの症状がある場合に、内服していただきます。

オテズラ(アプレミラスト)

2017年に日本に導入された乾癬に対する新しい内服です。
ホスホジエステラーゼ4(PDE4)を阻害することで(PDE4はcAMPを不活性型のAMPに分解する酵素です)、細胞内cAMP濃度を上昇させて炎症性メディエーターの産生を調整し、乾癬の症状を抑える効果を発揮します。
ぬり薬や光線治療だけではなかなか良くならない方、爪や関節症状のある方、何らかの事情で生物学的製剤が適応にならない方などに適しています。
主な副作用は下痢、悪心、頭痛です。治療費用は1ヵ月で約2万円弱(3割負担)になります。妊婦さんには使用できません。くわしくは医師にご相談ください。

オテズラ錠を服用される方へ「オテズラDAYS」

ソーティクツ
(デュークラバシチニブ)

2022年11月に発売された「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」に対する内服薬です。1日1回内服します。
乾癬では、炎症性サイトカインであるIL(インターロイキン)-23、IL-12、TNFα、IFN-αなどが細胞表面の受容体に結合し、細胞内へシグナルを伝達することで病態が引き起こされます。
TYK2(ティックツー)はJAK(ヤヌスキナーゼ)ファミリーの分子であり、細胞外の炎症性サイトカインの刺激シグナルを、細胞内に伝達する働きがあります。
ソーティクツは、TYK2が細胞内の受容体に結合できないように阻害するという新たな作用機序(TYK2阻害薬)で、炎症性サイトカインによるシグナル伝達を抑制し、乾癬の症状を改善させます。

ソーティクツ®錠を服用される方へ

生物学的製剤(注射薬)

日本皮膚科学会で承認された施設のみで行っている治療です。他の治療法でも効果がない中等症から重症の患者さんや、関節症状がある場合などに適応となる治療方法です。
関節症状の進行を抑え、皮膚症状がすべて改善することもある非常に効果の高い治療です。ただし、治療費用が高額なこと、血液検査やレントゲンなど定期的な検査が必要です。
治療開始時には、胸部レントゲン撮影やCT検査、採血検査(結核や肝炎など)などの検査が必要です。ご希望の場合、まずは基幹病院に紹介状を作成し、まずは病院で治療を開始していただきます。治療開始後、症状が安定すれば、病院と当院で連携しながら、継続的に治療可能です。

生物学的製剤(注射薬)

生物学的製剤の一覧

  • レミケード(インフリキシマブ):抗TNF-α
  • ヒュミラ(アダリムマブ):抗TNF-α 
    ※化膿性汗腺炎、壊疽性膿皮症にも適応あり
  • ステラーラ(ウステキヌマブ):抗IL12/23p40
  • コセンティクス(セクキヌマブ):抗IL-17A
  • トルツ(イキセキズマブ):抗IL-17A
  • ルミセフ(ブロダルマブ):抗IL-17受容体A
  • トレムフィア(グセルクマブ):抗IL-23p19
  • スキリージ(リサンキズマブ):抗IL-23p19
  • シムジア(セルトリズマブペゴル):抗TNF-α
  • イルミア(チルドラキズマブ):抗IL-23p19
  • ビンゼレックス(ビメキズマブ):抗IL-17A/IL-17F 
    ※化膿性汗腺炎にも適応あり
  • スペビゴ(スペソリマブ):抗IL-36 ※膿疱性乾癬にのみ適応

高額療養費制度

1カ月(その月の1日から末日)の間に医療機関の窓口で支払うべき金額(自己負担上限額)が一定の金額を超えると、超えた分を高額療養費として支給される場合があります。ひと月の上限額は、年齢や収入などによって異なります。自己負担上限額(1ヵ月の上限額)につきましては、加入している健康保険組合にお問い合わせください。

高額療養費制度

日常生活で気をつける事

  1. 皮膚への刺激は避けましょう
  2. 食事はバランス良く食べましょう
  3. お酒は飲み過ぎに注意しましょう
  4. タバコは控えましょう
  5. 風邪などの感染症に気をつけましょう
  6. 入浴はこまめにしましょう
  7. 日光浴は適度にしましょう
  8. ストレス解消を心がけましょう
生活習慣生活習慣

☆まめ知識:メタボリックシンドロームと乾癬

メタボリックシンドロームと皮膚の病気である乾癬は、何の関係もないように思われるかもしれません。
しかし、乾癬は、TNF-α(ティーエヌエフアルファ)という免疫や炎症に関係する伝達物質(サイトカイン)が病態に深く関わっていることがわかっています。
TNF-αにより炎症が持続すると、体内で分泌されているインスリンの抵抗性が増し(効きにくくなり)、コレステロールや中性脂肪が増加して脂質異常(高脂血症)になり、動脈硬化が進行します。

メタボリックシンドローム

このようにTNF-αによる炎症が起こっている乾癬をお持ちの方は、メタボリックシンドロームを合併しやすく、心筋梗塞や脳梗塞、2型糖尿病、高脂血症、高血圧を発症しやすいため、寿命にも影響することが知られています。また、痛風などの高尿酸血症があるとTNF-αが産生されるため、乾癬を悪くする可能性があります。
さらに、関節症状のある乾癬(関節症性乾癬)では、これらの疾患を合併する頻度がさらに高いとされています。ぶどう膜炎や結膜炎を合併することもあります。
以上のように、乾癬は皮膚だけの病気と思わず、「乾癬は全身疾患である」ということをご理解いただき、メタボリックシンドロームに注意しながら、内科的な管理もしっかり行っていくことが非常に大切です。

乾癬ドットコム
晴れやかソライアシスライフ
痛い乾癬.com
日本乾癬患者連合会
NPO法人東京乾癬の会 P-PAT
コセンティクスを使用される患者さんへ
スキリージ®
トモノワ®
「イルミア©」を使用される患者さまへ
乾癬ひろば
いっかく皮膚科クリニック
いっかく皮膚科クリニックは、姫路市広畑区にある皮膚科医院です。皮膚科の診療とともに、皮膚腫瘍の手術、シミ・ほくろ・イボ治療、医療レーザー脱毛などの美容皮膚科診療を行います。

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